share facebook facebook twitter menu hatena pocket slack

2018.02.05 MON

レベル3の自動運転タクシーに初乗車! CES視察レポート#3

増田 隆一

WRITTEN BY 増田 隆一

CES2018では、先端テクノロジーとして自動運転技術がフィーチャーされていて、非常に興味のある分野でありつつも、正直最初は「家電見本市なのになぜクルマ?」…と違和感がありました。

実際にラスベガスに行ってみて、各所に置かれた自動運転技術の展示を目の前にして「行きたい場所のボタンを押したら、そこまで自動で連れて行ってくれるクルマはそうか!もう立派な家電じゃないか!」と、ストンと腹落ちしたcloudpack.media編集長の増田です。

US出発の直前にこんなやりとりがありました。

閉じられた施設内ではなく、ガチの公道を走る自動運転車に乗れる機会などそうそうありませんし、しかもですよ、混雑もあれば荒っぽい運転が多い(気がする)ラスベガスど真ん中エリアの走行ですからね、嫌が応にも期待が高まるというものです。

CES2018で走った自動運転タクシーは『レベル3』

米国自動車技術会(SAE)の定義によると、自動運転は機能によって5段階に分類されています。もちろん技術としての進化と同時に、国や州の単位で法整備も進められています。

レベル 名称 概要 主対応
1 運転支援 自動ブレーキなどの運転支援機能 運転者
2 部分的な自動運転 部分的な自動運転。運転者は常に監督する必要あり 運転者
3 条件付き自動運転 条件付きの自動運転。緊急時を除き、運転を車に任せる システム/運転者
4 高度自動運転 運転者の操作が不要な高度な自動運転。環境によっては運転者が対応 システム/運転者
5 完全自動運転 システムがすべての運転操作を実施する。運転者不要 システム

今やレベル2までは完全に実用化されていると言ってもよいでしょう。筆者の自宅にある車にも『レベル2』の自動運転機能は備わっていて、高速道路を走行する時はいつも自動運転機能を使ってラクをしています。私がアクセルを踏むよりも大幅に燃費がよくなるので、とても悲しい気持ちになります。

レベル2では原則、運転手が主体となって走行することが求められていますので、自動運転中もハンドルを握っていないとアラートがあがります。こちらからの衝突予防はしっかりと制御されている安心感こそありますが、別の車から衝突されそうになったときの回避行動はシステムに任せたらアカンのだろうという、そんなレベルです。技術的にはあくまでも運転者の安全運転を『支援』する機能にとどまっています。

そして今回、CES2018の会場とラスベガスの主要ホテルの間を走行した自動運転タクシーは『レベル3』でした。

レベル3になると、運転者が乗っている必要こそありますが、システムが自律的に運転操作を実行するようになりますので、常にハンドルを握る必要がなくなります。

こうしたレベル3に求められるのが、高精度な三次元デジタルマップと、交通規制や周辺の道路状況を三次元デジタルマップと組み合わせてリアルタイムに自動車に配信するシステム。さらに走る・曲がる・止まるの基本動作と連動する高度な車載センサーたちと、自律的に安全走行を実現するAIとの連携などの仕組みが必要になります。

さあ、CES2018でラスベガスの街を走る自動運転タクシーは、どんな仕様になっているのでしょうか?

自動運転タクシーはBMW5シリーズ

今回の試験走行は、自動運転技術の『Aptiv』とタクシー配車サービス『Lyft』が組んで実施されました。車両はBMW 540iがベース車となっていました。BMWとはいえ、これ見よがしにカメラやレーダー装置などが飛び出た車両なのかと想像していたら、大きくは目立たないようにしっかりと既存の車両に統合される形でパッケージングされていたので、自動車メーカーとの調整も上手にこなしていることが伺えます。赤いホイールがカッコイイね!とテンションがあがります。


この図によると車両には自動運転に欠かすことのできないさまざまな装置が取り付けられていますが、肝となるのは全方位に埋め込まれている自律走行の『眼』となるLiDAR(ライダー)というセンサー(A)。LiDARはレーダーのようなデバイスで、物体に投射した光の反射時間を測定して周辺の三次元マップを生成します。車体を囲むように配置されていて、数百メートル先から至近距離までの広範囲を全方位で見渡していることになります。

この他(B)がカメラ、(C)がレーダー、(D)が信号機の情報を収集するDSRC、(E)がGPSとなっていて、これらが収集する情報をソフトウェアで統合して自動運転の安全性を高めています。

Aptivのリリースによると、2019年に商用化を目指しているのだそうです。

最終日、いざLVCCへ!

私たちが試乗会場を訪れたのはCESの最終日。やや閑散とする最終日なら乗せてもらえるんじゃないかと想像したのです。

LyftのアプリをiPhoneにインストールしてからアカウント登録して、LVCCの端っこにある試乗受付に向かいます。入り口のお姉さんが、今回の試乗について何か気取った説明をしていましたが、とにかく乗りたいので無視です(笑)

彼女からの有益な情報は「きょう走行している車両は20台よ」だけでした。少ないなぁ!

会場周辺はLyftのタクシーが普通に走っているのがわかります。Uberのアプリを立ち上げても同様だったので、このテのサービスがラスベガスでは当たり前になっていることが伺えます。

『Tap for a self-driving ride』をタップすると自動運転タクシーを呼ぶことができます。しかし、何度タップしても「いま空車がないぜ、また来いよ!」と言われます。すかさず戻るボタンで再トライを繰り返します。

かれこれ30分近く、空車を求めてLyftアプリと格闘したでしょうか。音楽ライブのチケットを取るために、土曜日の朝10時にイープラスと格闘しているのとたいして変わりません。むなしくiPhoneのバッテリーだけが減っていきます。

しばらくして同伴していた山口与力のLyftのアカウント登録が完了し、いよいよ2名体制で予約に参戦となりました。

わずか数分後「あ、増田さん、予約とれましたよ!」と山口が声をあげました。どうやら運の良い山口のアカウントで無事に配車ができた模様。目的地は『ザ・ベネチアン・リゾートホテル&カジノ』にセット。

運転者とサブ運転者の2名が同乗して、27分後に迎えに来てくれるそうです。

同意書へのサイン

予約が取れた旨をスタッフに告げると、おめでとう!という言葉に続いて、同意書にサインしろと言われました。私も山口も予約が取れた嬉しさから、ろくに目も通さずにサインしちゃいます(笑)

待ち時間があったのでワクワクも少し収まり、気持ちが落ち着いた頃に同意書の写真を拡大して英文を読んだら「この自動運転カーに乗ることで、私は身体への深刻なダメージを受けたり死亡するリスクがあることを承知しています」という一文が入っていることに気がつきます Σ( ̄ロ ̄;;)

自動運転カーの事故で死んでしまったら、CES大停電に次いで日本のニュースで取り上げられるに違いありません。すぐに忘れられる事故なんでしょうが、知り合いの間ではちょっとしたネタになるんだろうなと想像を膨らませました。むしろ私たちの冒険心がくすぐられるから不思議です。

待てど暮らせどお腹が空いてもクルマがこない

Lyftのアプリでは、自分たちを迎えに来てくれる車両の位置情報が見られます。しかし一向に動き出す気配がありません。予約から30分が過ぎたあたりで、ようやく動き出しました。待機スペースに入ってくるBMWを見るたびに「これか?いよいよか?」と期待が高まります。

あまりにヒマ過ぎて無駄に写真を撮りました。ブラックの車両もあったみたいです。センサー類が目立たなくてカッコイイ!

やっと乗車!

Lyftのアプリに反応がありました。えらい遅刻でしたが、ようやく迎えに来てくれたようです!

と思いきや、迎えに来たはずの車両がいきなり車庫に入ってしまいました。スタッフに声をかけてみたら「ドライバーの休憩時間なのでもう少し待ってね」と軽くいなされます。そこからさらに30分待たされて、ようやく呼び出されました。

待ちくたびれた二人。ひょっとしたらこの写真が人生最後の1枚になるかもしれないし、二人の死を伝える事故のニュースで使われるかもしれないので、ハイテンションで記念撮影に臨みます。

LVCCからベネチアンホテルまでご機嫌ドライブ

後部シートに乗り込むと助手席の男性から、今回の取り組みに関する解説がありました。敷地内は手動運転であること、公道に出てから自動運転に切り替わるなどの説明がありました。まだドライバーは普通にハンドルを握って運転しています。

LVCC内を走行中は画面にも「MANUAL」と表示されています。画面を覗くと交差点内の様子もしっかり把握していることがわかります。

交差点を曲がると敷地外です。いよいよ「AUTO」に切り替わりました。

手がハンドルから離れて自動運転がスタートです。左折車線への侵入を試みた自動運転カーは、左後方から接近する車両に反応して一瞬だけショックのあるブレーキがかかりました。お!と思ったのはこの一度だけでした。

センサーが把握している周囲の状況が画面に表示されています。すべてを表示しているのかどうかまではわかりませんが、自動運転に必要十分な解像度というのがあるのでしょうか、表示される三次元マップの解像度はあまり高くない印象です。

周囲を走る車との車間も適切なら、加速・減速もなめらかでしたが、前が詰まった車線で交差点に侵入し、信号が変わろうとする瞬間に遭遇しました。このまま前が進まなければ交差点の中で赤信号になる!どうするのか?と注目です。しっかり交通状況を把握できているのか、それとも偶然か、車列が少し詰まって赤信号になる直前に無事に交差点から抜けることができました。

目と鼻の先に『ベネチアン』が近づいてきました。私たちの自動運転体験もそろそろおしまいのようです。

ベネチアンの車寄せに入ったところで、再び「MANUAL」モードになりました。身も蓋もないですが「ごく普通のドライブ」が終わろうとしています。


良い意味でとっても普通のドライブ体験でした。きっとこの「普通」を実現するために、事前にラスベガスの交通情報をかなり入念に調べ上げていたり、さまざまな調整が行われていたことでしょう。

特定の敷地内であれば、今の自動運転技術はすでに実用レベルに達しているのでしょうが、レベル5の自動運転カーが公道を走り回るようになるには乗り越えないとならない課題が山ほどありそうです。実現するのはずっと先の未来なんだろうなぁと感じました。各種技術のエクスポネンシャルな進化と、迅速な法整備に期待したいところです。

世界はとっくに変わっている

今回のCESでは、最新のIoTデバイス、高速・高容量・低遅延が特長の5GのインフラのデモやNVIDIAに代表されるGPUベースのAIチップなどをLVCCで見たあと、最後の最後にAptiv+Lyftの自動運転タクシーを体験するという流れになりました。それぞれの技術がどのように自動運転の車両にパッケージ化され、これらがどうやって私たちの社会と融合していくのかを自分の目で垣間見ることができ、これからのITビジネスの在り方を考えるきっかけになりました。

今やネットでどんな情報でも手に入る時代。CESの様子だって日本に居ながらにしていくらでも知ることができます。でもココに来なければ、世界はとっくに変わってしまっていることに気がつくことはできませんでした。

「シャチョウ、ライネンモCESイキタイデス。ヨテイアケテオキマス!」
モウイチド「…行けばいいじゃんかw」ト、コタエテクダサイネ…。

増田 隆一

増田 隆一

2015年にアイレット入社。cloudpackのマーケティングコミュニケーション担当 兼 採用マーケティング 兼 cloudpack.media編集長。ネコを愛する泡盛マイスター。虎ノ門界隈の飲食店制覇という壮大な野望を遂行中。